「名残り」
とても美しい響きを持った言葉だと思いませんか。
遡ると王朝時代からあった言葉だそうです。
茶の湯で「名残り」というと、昨年の秋に口封を切って茶臼で挽いて使い始めた葉茶が
茶壺の底に残り少なく寂しくなって来た、というこの季節をさすことが多いのですが
夏の太陽を一身に受けて毎日新たな花を次々につけ、
来る日も来る日も咲き誇った夏の花の代表である木槿達の蕾が徐々に小さくなり、
勢いを失いつつも懸命に咲いている姿、それも名残りと呼びたいような気がします。
表千家7代家元如心斎天然宗左居士は、今日の家元制度の基を作り出したので、
表千家「中興の祖」と呼ばれています。
お家元では、毎年9月13日に居士の遺徳を偲び「天然忌」が営まれます。
「天然忌」には、残月亭の床に画像に当る円相が掛けられ、
その前にお家元が季節の白い芙蓉を入れられ、お茶湯を供えられるそうです。
今を盛りに咲き誇る花ではなく、名残りの花を一輪そっと供える。
茶室において花は「季節感」をかもし出す直接的な役割ですが、
出始め、出盛りでなく名残りを添えることにより
短い命の花から生の喜び感じ取る教えがあるような気がします。
11月の口切りのころから活けられる椿の種類もたくさんありますが、
木槿も白、ピンク、一重、八重などたくさん種類があるようです。
京都では祇園守りと呼ばれる白い木槿が、東京では大徳寺と言われるというのも面白いですね。
真っ白いものは、遠州が好んだことから「遠州木槿」と呼ばれ、
利休の孫であり三千家の祖といわれる千宗旦が好んだものは「宗旦木槿」と呼ばれます。
宗旦木槿は、真っ白い花の中が赤く、底紅とも呼ばれます。
(宗旦木槿 写真は表千家HPよりお借りしました)
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