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粥茶事

今年は端午の節句の日が立夏でした。
立夏を目処に茶道では炉から風炉へとしつらえを変えます。
先日の家元のお言葉に
「(家元は)京都に居を構えるので炉と風炉を変える時期を立夏の頃を目安としていますが、
日本は北から南まで季節の様子が一定ではないのでその土地その土地で
季節に応じたしつらえの変化をするのが良いように思います」
という意味合いの一節がありました。
そのことを言い得るに際して、

「風炉は四方山にかすみかかりたる時吉」(元伯宗旦)
「樅(もみ)の若葉の出る頃、風炉の湯よし」(古田織部)

の言葉を引用されていて、なるほどと思いました。
また、季節の暑い寒いだけでなく、老人は遅めに、若い者は早目にという教えもあるそうで、
土地柄や風土や人に応じたしつらえの変化に知恵をもつことが必要であることを知りました。


さて、そんな炉と風炉の端境期のこの季節ですが、前々からお招き状を頂戴していた
粥茶事に出かけてまいりました。


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板風炉は主に炉の恋しくなる秋に用いられることが多いようですが、
風炉になろうとするこのような季節にも爽やかさがあり、
またほんの少し炉の名残のような風情もあり、面白いしつらえです。

釣釜で用いる茶飯釜を板風炉にのせて今日は粥茶事で一服頂戴します。


釜の蓋も茶飯釜と違い、粥がくつくつと煮えるように圧力のかからない生地の蓋です。
ときどき蓋の隙間から粥の炊けるにおいと湯気があがり、
蓋をずらして吹きこぼれをふせぎながら米の煮えを待ちながら一献頂戴します。


粥茶事_a0135439_022727.jpg

粥が炊けるころにまずは重湯を一勺ずつ頂戴し、その甘くねっとりとした香り豊かな
白湯を心行くまで愉しみます。

刻が進みにつれ、粥の粘度にも変化が出て、一椀目、二椀目、と違った味の粥を
季節の献立と共に頂戴します。


実はこの茶事で初めて釜で炊く粥をいただいたのですが、
何ともいえぬ滋味溢れるお味に文字通り 感動しました。
釜のもつ高いエネルギーがそのまま粥に移り、
それをそのまま頂戴したかのような不思議な力を感じました。

それはそのままご亭主のお人柄にも通じていて、
優しさと心根の美しさ、そして人を思いやる人間力なのだなと思いました。



多くは語れない茶事の出来事ですが、この茶事にお相伴させていただき
私は言葉では表現できない大切なことを教えていただきました。
茶道を続けてきて良かったと思うのはこういう時です。
「お茶はもの言わぬもの」と我が師匠はよく口にされますが、言葉より的確に、
所作より心のこもったものを一服のお茶に託すということがあるのだと思いました。


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by haijikg7 | 2012-05-08 19:00 | 茶道


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