「余乃花はみな末寺なり妙蓮寺」
椿の種類数々あれど、
室町時代の連歌師である宗祇がかく詠んだという歌がのこる銘花。
妙蓮寺に残る本家の椿は焼失し、今は二代目だとか。
色も赤い椿である。
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利休の孫の千宗旦の逸話としてこんな話が残っています。
正安寺のご住職が庭に咲いた良い頃合の妙蓮寺椿を
宗旦に届けるよう、小僧さんを遣いにやります。
ご住職の言いつけどおり、小僧さんは大切に運んでいましたが
宗旦の家に着くまでに花が枝からポロリと落ちてしまいました。
途方に暮れながらも、小僧さんは正直に宗旦にその旨を話します。
宗旦は「いやいやご苦労さん。どうぞ中で一服召し上がっていきなさい。」
と、小僧さんを茶室に招きます。
手足を清めて茶室に入った小僧さんの目に飛び込んできたのは
利休ゆかりの竹の花入れに葉だけ生けられた椿の枝。
そしてその脇に、さっきまで小僧さんの手にあった椿の花が
ポトリと、さも今落ちたかのように置いてありました。
茶室の中での良し悪しは、客が決めればよいこと。
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正直に話した小僧さんの氣持に対する宗旦のもてなしです。