白い花はなぜ白い? ずいぶん前にサンドブラストの工房で聞いたお話です。 目と指先を極度に緊張させる下絵のトレースやカッティングを1時間2時間と続けていると、 ふと何かを思いついて話したくなったり、何かを聞きたくなったりします。 息を詰めるという言葉がありますが、まさにそんな時間が続くと今度は緩和させたくなるのでしょうか。 そんなとき話したい側と聞きたい側の欲求がうまく合致すると、 大変有意義なおしゃべりの休憩時間になることがあります。 サンドブラストの師はかつて大学で色素などの研究をされ教鞭をとられていました。 退官されてすでに20年以上になられますが、今もサンドブラストの手仕事の合間に 興味深い化学のお話や、すでに60カ国以上訪問した外国のお話をしてくださることがあります。 私は学生の頃から理数系が苦手で化学なんて理解の外にある脳の構造なのですが、 師はさすがに学生に理解させるために話すプロですから、とてもわかりやすくお話くださるのです。 * * * * * 「白い花がなぜ白いのか知っているかね?」 そんな唐突な質問からこのお話ははじまりました。 以下、師の説明を要約します。 花の色には、無数といってよいほどの色の種類があります。 花屋さんで売られている花の中でよく売れるのは「ピンク」だそうです。 ついで、赤、紫、白・・・と続くのですが自然界(野生)では何色の花が多く生息するのかというと、 ・白 3割以上 ・黄 3割 ・青~紫 2割 ・赤~橙 1割 ・その他 という順になるそうです。 どの花もギュッと指先に力を入れて花びらをこすると、それぞれ見た目どおりの色素の液が滲みます。 ちなみに赤・青・紫の花にはアントシアニンという色素が含まれていて、 これはよく耳にする名前ではないでしょうか。 けれど白い花の多くはギュッと潰しても白い液は出ず、たいていは淡い黄色か透明の液が滲みます。 この淡い黄色はフラボノイド(フラボン系色素)で抗菌作用があるものだそうです。 では、白以外の他の色の花は見た目と同じ色の液(色素)なのになぜ白い花だけが違う色素なのでしょうか。 この説明を師はこんな風に説明してくださいました。 花びらの断面はこんな感じです。 ------------- (表皮) ○○○○○○ ○○○○○○ (スポンジ系組織) ○○○○○○ ------------- (表皮) スポンジ系組織には無数の気泡があり、花が元気に咲いている(細胞が活発な)ときは この気泡がプクプクと動いているのだそうです。 この気泡に光があたったとき、反射光によって淡い黄色(ほぼ透明)は人の目には白く映るのだそうです。 子供の頃よくお風呂でこんな遊びをしませんでしたか? お風呂の浴槽にタオルで空気の風船を作って沈めたら小さな気泡がプクプクと浮いて上がる、アレです。 浴槽のお湯は無色透明なのに浮き上がる気泡は白い泡に見えます。 ちょうどこれと同じことが花びらの中でも起こっているのです。 あるいはビールを想像していただいてもわかりやすと思います。 ビールの液体は黄色いのに泡は白いです。 あれも気泡によるマジックです。 だから白い花が枯れたら花びらが透明になっています。 つまり白い花にはほぼ目に見える色素がなく、白く見えているのは気泡なのだそうです。 * * * * * さて、すっかりそんなことはご存知の方もおられたでしょうか? 私はこのお話をうかがったとき「ふ~ん、そうなの~」と感心しました。 だって白い花は白い色素だと思っていましたから。 けれど理由を教えていただくと「そうだ、そうだ」と思うことばかりです。 また、見た目と真実は違うんだなぁ、なんてことも考えたりもしました。 白い花は年中を通じて、また自然界において最も多い花の色だと先述しました。 その理由は「いまだ謎なんだよ」という言葉でサンドブラストの師のお話は締めくくられましたが、 今改めて自分なりに考えてみたらやはり陰陽のバランスかなぁと思い至りました。 先日こちらの記事で花の色について陰陽を考える機会をいただきました。 白い色は黄色と緑色の間にくるようで、中庸な部分に位置します。 自然界において一番多い花の色=「白」と二番目に多い花の色=「黄」。 いずれも中庸に近いのですね。 「身近なところに陰陽は転がっている。」 これはむそう塾で教わったことです。
by haijikg7
| 2010-06-03 21:18
| サンドブラスト
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